有機・高分子材料の物性および機能は、分子レベルからマイクロメートルスケールにおよぶ階層的な自己集合構造に強く影響を受ける。したがって、機能性有機材料の創出のためには、分子の自己集合プロセスを深く理解し自在に制御することが極めて重要である。複数の分子間相互作用のバランスが自己集合経路を決定し、結果として速度論的にトラップされた構造や熱力学的に最安定な構造が生じる。また、化学的・物理的な刺激や化学反応などによって分子の動的な離合集散が引き起こされ、生体システム見られるような適応性が発現され得る。このような動的な自己集合を基礎とした機能性有機材料の開発は、近年大きな広がりを見せている。
以上の背景に鑑みて本セッションでは、溶液系にとどまらず、固体表面や凝縮相における動的な自己集合挙動および構造に基づく「動的分子アーキテクトニクス」について議論する。(1) 超分子集合体構造、(2) 分子認識と自己集合、(3) 分子および高分子液体材料、(4) 化学的および物理的刺激応答性、(5) 自己組織化分子システムのナノエレクトロニクス、(6) 動的自己集合プロセスの評価法、などの最新の成果を集約し、「動的分子アーキテクトニクス」の未来を展望する。